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このように、いろいろな事柄を記録したり計算したりして、その結果をまとめてゆくためには、どうしても「しっかりしたしくみ」をもった方法でないと、間違いなく処理していくことはむずかしいのです
簿記、このために最も適した方法です
このような種々の要請を土台に、芽をふき、発展をとげてきたのが簿記のしくみなのです
簿記の起源については諸説があります
しかし、いま、その起源を論ずることが趣旨ではありませんので、単に、1世紀ごろにイタリアで、ようやく盛んになった商業行為の成果の記録の必要から生まれ、そして発展してきたひとつのしくみであるとだけ言っておきます
そしてまた、その生い立ちからもわかるように、おおよそ全世界に共通な思考方法としくみになっているという点のみをつけ加えておきます
家計という経営は相対的に単純です
したがって成果の記録簿たる家計簿も現金という一種だけの資産の動きを記録するだけでことがたります
ところが会社活動においてはそれではすみません
たとえば、仕入れた材料、でき上がった製品、これらを格納しておくための倉庫、業務を行なうための事務所のような具体的なものになっていれば、売掛金という形の債権を持つこともあります
さらに、毎月の資金繰りで不足が出ると、銀行から借金をして埋めることになりますが、この場合には借入金という形の債務(負債)を持つことになります
このように会社活動では現金というただ一種の資産を追跡するだけにとどまらず、「多種多様の状態」を追跡する必要があるのです
この三つの項目に分類します
すなわち、資産、負債、資本の三区分です
資産とは現金や原材料、製品、土地、建物、備品などのこと、負債とは買掛金や預かり金や借入金などのこと、そして簿記では資産と負債とをひっくるめて財産という表現を使うことがあります
この場合には資産をプラス財産と言い、負債はマイナス財産であると説明されます
財産という表現を使った実際の例としては財産目録がありますが、財産目録の利用価値の減少や財産という表現の持つあいまいさから、用語的重要性は薄れてきていると思われます
ところが、前に述べた「多種多様の状態」を把握するための第三番目の区分を説明し、理解していただくためには大いに役立ちます
すなわちプラス財産たる資産とマイナス財産たる負債との差額、これが資本なのです
プラス財産、マイナス財産に対して資本は正味財産または純財産であると言われます
そこで
資本とは払込資本金や繰越利益金などとなります
この関係を式であらわすと、次のようになります
「資産一負債=資本」この算式の意味するところを考えてみましょう
会社には製品や建物や備品類のような資産群があります
一方、このような各種資産群を取得するときに借金をしてあったとします
そこで資産群の価値合計から負債群の価値合計を引いた残りー−これはその会社の正味資産であると同時に、その会社の所有者(株主)に帰属する持ち分を示すということになります
これが資本なのです
例をあげて説明しましょう
ある人が、現金200万円を元入れして商売を始めることにしたとします
この店の名を仮に日本商事としておきます
この場合は、資産だけで負債がないから、資本、200万円ということになります
はじめに元入れした現金は、当座預金とか、商品に変形していますが、資本の額は最初と同額です
このように、簿記でいう資本の概念は、計算上の大きさであって、一応抽象的なものであると理解してください
普通に資本というときは、元入れした現金や物をさしていますが、簿記では、これは資本でなく資産であるということになるわけです
上に示した等式の左辺にある負債を右辺へ移しますと、次の式になります
「資産=負債十資本」これを基本等式または貸借対照表等式といい、この式から資産、負債および資本の状態を示す表を作ることが容易にできます
これが貸借対照表なのです
前例を使って日本商事の貸借対照表を作ってみましょう
前ページの数値を、めんどうがらずに追いかけてください
これが、読者のみなさんに最初にお目にかける貸借対照表です
会社のなかでも、経理とか貸借対照表とかいうと、とかく食わずぎらいで敬遠されがちですが、それほどややこしいものではないなということがわかっていただけると思います
説明をつづけましょう
貸借対照表は、左右両側に分けて記入します
単純な左側、右側なのですが、簿記では左側のことを借方、右側のことを貸方と呼びます
この借方、貸方という呼び方も簿記発生論的には無意義ではないのですが、これはひとまずさておいて、「借」とか「貸」の語義に結びつけた考え方をしないでほしいのです
あくまで前述の貸借対照表等式を土台に。考えてください
すなわち、左側には貸借対照表等式の左辺にある資産を記入し、右側には貸借対照表等式の右辺にある負債および資本を記入するわけです
したがって、この左側の合計額と右側の合計額はつねに同額となります
貸借対照表について、もうひとつ大切なことを説明しておきます
この左右が同額になることは、貸借対照表等式から容易に理解されるところですが、ちがった見方をすれば、貸借対照表の右側は「この会社はどのような方法で資金を集めたか」を示し、左側は、「その資金が現在どんな形で存在しているか」を示しているので、当然、その左右は同額になるというわけです
日本商事の貸借対照表をこの関係から見なおして表にまとめると、次ページのようになります
大切なことですから、もう一度まとめてみましょう
すなわち、貸借対照は、一定の時点における会社の財産の状態を示す表であるということができ、そして実際にはややこしい姿でお目見えはしているが、つまりは前述の形が貸借対照表の基本型であるわけです
そしてまた、貸借対照表の実例では左側を借方、右側を貸方と表示する場合があるけれども、この場合の借方、貸方については、一応、全然無意味で、単に、慣習からきたものと考えたほうがよく、むしろ、前ページの貸借対照表等式の左辺が左側(借方)に、右辺が右側前掲の貸借対照表は、基本型であるとともに原始的なものです
これにバラエティーを与えるもののひとつに純損益の発生かあります
このため貸借対照表に当然変化が起こります
これを少し説明しておきます
日本商事において、4月1日から4月30日までに次のような取引があったとします(前述の例示のつづきと考えてください)
万円のうち、10万円を現金で受け取り、20万円を掛とした
売り上げた商品の原価は2万円である
利益は、何も失わないで資産(たとえば現金)を得た場合および失ったもの(たとえば商品)があっても、それより得たもの(たとえば現金とか売掛金)のほうが多い場合に生じます
損失は、この反対の場合に生じるわけです
別の見方をしますと、利益は資本の増加に結びつき、損失は逆に資本の減少に結びついています
すなわち、ある期に利益が発生し、配当等の処分が全然なかったとすれば、資本がその額だけ増加します
損益計算書は、貸借対照表に純利益(または純損失)として一括して示されたものの明細を説明した表で、一定の期間における会社の営業成績を示すものであるというわけです

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